冬の旅 ヴィルヘルム・ミュラー
訳詩:神崎昭伍
※テキストデータのためウムラウトなどは省略しています。
私の美しい恋びとの家の上で,
風が風見の旗とたわむれている.
するともう私は妄想につつまれて考えてしまう,
逃れて行く哀れな男に嘲りの口笛を吹いているのだと.
高だかとかかげてある,その家の紋章に
もっと早く気づくべきだった.
そうすれば,その家に,心変らぬ女性を
探し求めたりは決してしなかったろう.
風は屋根の上と同じように,家の中で
人びとの心とたわむれる.そんなに音高くないだけだ.
どうして人びとが私の苦しみをたづねたりしようか.
その家の児は豊かな花嫁なのだ.