シューベルト歌曲集「冬の旅」作品89 D.911(全曲)訳詞
Die Winterreise / Franz Schubert


冬の旅  ヴィルヘルム・ミュラー
訳詩:神崎昭伍

※テキストデータのためウムラウトなどは省略しています。


7 川の上で


あんなにも愉しげにぎわめいていた
お前,澄みきった,気ままな川よ,
何と静かになってしまったのか.
別れの挨拶もしてくれないな.

堅く動かぬ氷のからで,
お前はおのれを覆いかくして
冷たく身動きもせず,
砂の中に身をのべている.

お前の氷の覆いに私は
とがった石で
恋人の名前と
時間と日を刻み込む.

初めての挨拶の日と,
私が立ち去った日を.
名前と数字をめぐって
こわれた指輪がからんでいる.

私の心よ,この小川に
おのれの姿をみとめるのではないか?
堅いからの下で
はげしく,みなぎり流れてはいないか?


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