冬の旅 ヴィルヘルム・ミュラー
訳詩:神崎昭伍
※テキストデータのためウムラウトなどは省略しています。
氷と雪ばかりを堆んでいるというのに
私の両の足のうらは燃えるようだ.
塔がもう見えなくなるまでは,
息をいれようとは思わない.
石のすべてに私はつまづいた.
こんなふうに私は街から出ようと急いだ.
鳥たちは家という家から
私の帽子に雪のたまや雹を投げつけた.
何とちがったふうにお前は私をむかえいれたことか,
お前,不実の街よ!
お前の明るい窓辺には
雲雀とナハティガルが歌を競っていた.
こんもりと茂った菩提樹は花をひらき
澄んだ小川は明るくせせらぎの音をたて,
そしてああ,少女の眼が二つ輝やいていた.
そのとき,お前の運命は砕けたのだ.
その日のことを思い出すと,
もう一度ふりかえりたくなる,
ふたたびよろめきもどり
あのひとの家の前に静かに立ちたくなる.