冬の旅 ヴィルヘルム・ミュラー
訳詩:神崎昭伍
※テキストデータのためウムラウトなどは省略しています。
私は色とりどりの花を夢みた.
五月に咲くような花を,
私は緑の牧場を夢み,
愉しげな小鳥のさえずりを耳にした.
そして鶏がときを告げて,
私は目を覚した.
寒く,暗かった.
鳥が屋根から叫んでいた.
だが窓のガラスに
だれが木の葉をえがいたのか?
あなた方は冬に花を夢みる男を
たぶん笑うことだろう?
私は愛をかさねる夢を見た.
美しい娘の夢,
抱きしめ,くちづけ,
喜こびと幸福の夢.
そして鶏がときを告げて,
私の心は目ざめた.
いま私はここにひとり坐り,
夢を思いかえしている.
私はふたたび眼を閉じたが,
心はまだ温かく脈うっている.
窓の木の葉はいつ緑になるか?
いつ私は恋人を腕にいだくか?