シューベルト歌曲集「冬の旅」作品89 D.911(全曲)訳詞
Die Winterreise / Franz Schubert


冬の旅  ヴィルヘルム・ミュラー
訳詩:神崎昭伍

※テキストデータのためウムラウトなどは省略しています。


19 錯 覚


一つの光が親しげに私の前をおどって行く.
私はあちこち,でたらめについて行く.
ついて行くのがたのしいのだ.そして,その光が
旅人を惑わすのだと悟る.
ああ,私のように惨めな男は.
華やかなたくらみによろこんで身をゆだねる.
氷と夜と恐怖のかなたに
明るく温かい家と
そこに住むいとしい人を見せるたくらみ.
錯覚だけが私の手に入るむくいなのだ.


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