冬の旅 ヴィルヘルム・ミュラー
訳詩:神崎昭伍
※テキストデータのためウムラウトなどは省略しています。
あちら,村のはずれに,
手回しのオルガン弾きが立っている.
そしてかじかんだ指で
弾ける曲を,回している.
氷上にはだしで,
あちこちとよろめいている.
そして,小きな皿は
いつまでも,空のまま.
だれも聞いてやろうとせず,
だれも見てやろうとしない.
そして犬どもが
老人のまわりで唸っている.
老人はすべてを,
なり行きにまかせ,
回す,……老人の
オルガンはいつまでも 止らない.
変った老人よ,
お前といっしょに行こうか?
私の歌にあわせて,
オルガンを回してくれないか?